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日記

流れる/幸田文

 

流れる (新潮文庫)

流れる (新潮文庫)

 

読んだ。

花柳界に生きる「くろうと」女性のなまなましい生活を、その世界に飛び込んだ「しろうと」女中の眼から綿密な筆致で描いた小説です。

幸田文の文章が美しいと感じられるのは、言葉の選び方が音声に依っているからではないでしょうか。独特で質感的な擬音語の多用もそうですが、濁りの少ない言葉が意図して選ばれているように感じます。あとは漢語に由来しているような硬い言葉と、そうではないやわらかい言葉の使い分けがうまい。

若い女性は若い女性としてふわふわと描かれている一方で、若さの一線を退いた女性たちがより生き生きと描写されています。身を崩したり布団からの起き上がったりといった些細な振る舞いが、年季の入った完成された動作として昇華されています。逆も然りで、みすぼらしい振る舞いももこれでもかというほど痛烈に、生々しく描かれる。

短編『台所のおと』を以前読み、そちらも素晴らしかったのでこの本を買いました。幸田文のように文章が書ければどんなにいいだろう。